「有馬温泉ってなぜこんなに有名なんだろう」と思ったことはありませんか?
神戸からわずか30分ほどの距離にありながら、日本三古湯の一つに数えられ、今も多くの人が訪れる有馬温泉。その名前は誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。実は有馬温泉が有名になったのには、古い歴史と独特の泉質、そして意外な人物との深い関わりがありました。ここでは有馬温泉が日本を代表する温泉地として知られるようになった理由を、歴史的な背景から現代の魅力まで紹介していきます。
有馬温泉が日本三古湯に選ばれる理由とは?
有馬温泉は道後温泉、白浜温泉とともに「日本三古湯」と呼ばれています。ただ古いだけではなく、日本の温泉文化を語る上で欠かせない存在なんですよね。その理由は1300年以上前にさかのぼる深い歴史と、途切れることなく湧き続けてきた温泉の力にあります。
1. 日本書紀にも登場する1300年以上の歴史
有馬温泉の記録は、なんと日本最古の歴史書である『日本書紀』にまで登場します。
舒明天皇や孝徳天皇が訪れたという記述があり、少なくとも7世紀には温泉地として知られていたことがわかっています。つまり1400年近くも前から、日本の歴史を支えてきた温泉だったわけです。これほど長い間、人々に愛され続けてきた温泉は日本国内でも限られていますよね。
平安時代には清少納言が『枕草子』の中で「ななくりの湯」として有馬温泉を挙げています。当時から都の貴族たちにとって憧れの温泉地だったことがうかがえます。
2. 神話の時代から湧き続ける温泉
有馬温泉の起源は、神話の時代にまでさかのぼるといわれています。
大己貴命と少彦名命という二柱の神様が、傷ついた鳥が温泉で癒されている姿を見て、この地に温泉があることを発見したという伝説が残っています。神話と結びついた温泉は他にもありますが、有馬温泉の場合は実際の歴史とも重なっているところが興味深いですよね。
奈良時代には僧侶の行基が温泉寺を建立し、温泉地として本格的な整備が始まりました。鎌倉時代には仁西上人が十二の宿坊を開いたことで、温泉街の基礎ができあがっていきます。
3. 有馬温泉・道後温泉・白浜温泉が三古湯に選ばれた背景
日本三古湯に選ばれたのは、単に古いだけではなく、歴史的な文献にしっかりと記録が残っているという点が大きいです。
有馬温泉は『日本書紀』『風土記』『枕草子』など、さまざまな古典文学に登場しています。道後温泉も『日本書紀』に、白浜温泉は『万葉集』に記録があり、この3つの温泉地は古代から確実に存在していたことが証明されているわけです。
しかも有馬温泉の場合、ただ記録があるだけでなく、時代ごとに復興や整備が繰り返されてきました。この「継続性」こそが、日本三古湯としての地位を確固たるものにしているんですよね。
金泉と銀泉:有馬温泉ならではの珍しい泉質
有馬温泉を語る上で欠かせないのが、金泉と銀泉という2種類の温泉です。この2つの泉質が同じ場所で楽しめる温泉地は、日本でもかなり珍しいんですよね。見た目も効能も全く異なる温泉が湧いているというのは、地質学的にも興味深い現象だといわれています。
1. 赤褐色の金泉は世界的にも珍しい含鉄泉
金泉と呼ばれる温泉は、鮮やかな赤褐色をしているのが特徴です。
これは鉄分を多く含んでいるためで、空気に触れると酸化して赤茶色に変わるんです。含鉄泉は日本国内でもそれほど多くありませんが、有馬温泉の金泉は特に鉄分の濃度が高いことで知られています。塩分濃度も海水の約2倍という高さで、入浴すると体がぽかぽかと温まり、湯冷めしにくいという特徴があります。
保温効果が高いため、冷え性や関節痛、筋肉痛などに良いとされています。湯上がりに肌がしっとりとした感覚になるのも、塩分によって皮膚に膜ができるからなんですよね。
2. 無色透明の銀泉は美肌効果が期待できる
一方、銀泉は無色透明でさっぱりとした感触の温泉です。
炭酸泉とラジウム泉の2種類があり、どちらも金泉とは全く違った雰囲気を持っています。炭酸泉は入浴すると肌に小さな気泡が付着し、血行を促進する効果があるといわれています。ラジウム泉は自然放射能を含む温泉で、免疫力を高めたり新陳代謝を促したりする働きがあるとされています。
金泉に比べると刺激が少ないため、肌が敏感な人でも入りやすいのが銀泉の良いところです。美肌効果も期待できることから、女性に人気があります。
3. 2つの泉質を楽しめる温泉地は珍しい
温泉地によっては複数の泉質があるところもありますが、有馬温泉のように全く性質の異なる温泉が共存しているケースは珍しいです。
金泉と銀泉を両方楽しめる施設もあれば、どちらか一方に特化した施設もあるので、自分の好みや体調に合わせて選べるのが嬉しいですよね。日帰り温泉施設の「金の湯」「銀の湯」では、それぞれの泉質をじっくり堪能できます。
| 施設名 | 泉質 | 料金 | 営業時間 |
|---|---|---|---|
| 金の湯 | 金泉 | 大人 650円 | 8:00〜22:00 |
| 銀の湯 | 銀泉 | 大人 550円 | 9:00〜21:00 |
温泉好きの人なら、一度の訪問で両方試してみるのもおすすめです。体で違いを感じ取れるのが面白いところですよね。
豊臣秀吉が愛した温泉地という歴史
有馬温泉が全国的に有名になったきっかけの一つが、豊臣秀吉との深い関わりです。戦国時代を生き抜いた天下人が、なぜこれほどまでに有馬温泉を気に入ったのか。その理由を知ると、有馬温泉の魅力がより深く理解できるかもしれません。
1. 秀吉が何度も訪れた記録が残っている
豊臣秀吉は生涯で9回も有馬温泉を訪れたという記録が残っています。
天下統一という大事業の合間を縫って、これだけの回数訪問するというのは相当な思い入れがあったはずです。単なる湯治だけでなく、茶会を開いたり家臣たちを招いたりと、政治的な場としても活用していました。秀吉にとって有馬温泉は、心身を休める場所であると同時に、重要な社交の場でもあったんですよね。
正室のねねや側室の淀殿も同行したという記録があり、家族ぐるみで楽しんでいた様子がうかがえます。
2. 秀吉が温泉街の整備に力を入れた
秀吉は有馬温泉の復興にも大きく貢献しました。
当時の有馬温泉は、度重なる戦乱で荒廃していた時期がありました。秀吉は温泉の改修工事を命じ、湯屋や道路の整備を進めたんです。これによって温泉街としての機能が格段に向上し、多くの人が訪れるようになりました。
秀吉の死後も、その遺志を継いだ家臣たちが整備を続けたことで、江戸時代には庶民にも親しまれる温泉地へと発展していきます。歴史上の人物が直接関わった温泉地というのは、それだけで特別な価値がありますよね。
3. 太閤橋や太閤の湯など秀吉ゆかりのスポット
現在の有馬温泉には、秀吉にちなんだ名所が数多く残っています。
温泉街の中心部にある太閤橋は、秀吉が架けたとされる橋を再現したもので、温泉街散策の定番スポットになっています。また「太閤の湯」という日帰り温泉施設では、秀吉の時代を再現した雰囲気の中で温泉を楽しめます。金泉・銀泉の両方に入れるだけでなく、岩盤浴やサウナなども充実しているので、一日中過ごせる場所です。
太閤秀吉像が温泉街のあちこちに立っていて、歴史を感じながら散策できるのも有馬温泉ならではの楽しみ方ですよね。
関西の奥座敷として発展した立地の良さ
有馬温泉が今も多くの人に愛される理由の一つが、アクセスの良さです。都市部から近い距離にありながら、しっかりと温泉地の風情を感じられる。この絶妙なバランスが「関西の奥座敷」と呼ばれる所以なんですよね。
1. 大阪から電車で約1時間というアクセスの良さ
大阪の中心部から有馬温泉までは、電車で約1時間ほどで到着します。
梅田駅から阪急電車と神戸電鉄を乗り継いで行くルートが一般的で、乗り換えも1回だけなので迷うこともありません。朝出発すれば午前中には温泉に入れますし、日帰りでも十分に楽しめる距離です。これだけ近ければ、週末にふらっと出かけることもできますよね。
新幹線の停車駅である新大阪からも1時間強で行けるので、関西以外から訪れる人にとっても便利な立地になっています。
2. 神戸の中心部から30分で行ける近さ
神戸の三宮駅からは、さらに近く約30分で到着します。
神戸電鉄に乗れば乗り換えなしで有馬温泉駅まで行けるので、初めて訪れる人でも安心です。神戸観光と組み合わせて計画を立てる人も多く、昼間は神戸の街を楽しんで、夕方から有馬温泉でゆっくりするという過ごし方もできます。
また、神戸市バスやタクシーを利用すれば、もっと直接的にアクセスできるのも便利なところです。タクシーなら渋滞がなければ25分ほどで着くので、荷物が多い時などは重宝しますよね。
3. 日帰りでも宿泊でも楽しめる温泉街
アクセスの良さを活かして、有馬温泉では日帰り温泉施設が充実しています。
前述の「金の湯」「銀の湯」以外にも、「太閤の湯」などの大型施設があり、手ぶらで訪れても温泉を満喫できます。タオルや浴衣のレンタルもあるので、思い立ったらすぐ行けるのが嬉しいところです。
一方で宿泊施設も歴史ある老舗旅館から、モダンなホテルまで幅広く揃っています。ゆっくり過ごしたい時は一泊して、温泉街の夜の雰囲気を楽しむのもおすすめです。立地の良さがあるからこそ、いろいろな楽しみ方ができるんですよね。
風情ある温泉街と充実した観光スポット
有馬温泉の魅力は温泉だけではありません。歴史を感じさせる街並みや、季節ごとに変わる風景、そして温泉街ならではのお土産や食べ歩きグルメなど、見どころがたくさんあります。温泉に入った後の散策も、有馬温泉の大きな楽しみの一つです。
1. 情緒あふれる温泉街の散策が楽しめる
有馬温泉駅から温泉街へ続く道は、風情のある石畳や格子戸の建物が立ち並んでいます。
細い路地を歩いていると、江戸時代や明治時代にタイムスリップしたような気分になれるんですよね。温泉街特有のゆったりとした空気感の中で、足湯に立ち寄ったり、カフェで休憩したりしながら散策するのがおすすめです。
「ねね橋」という朱色の美しい橋からは、温泉街全体を見渡せるビュースポットになっています。紅葉の季節には特に美しく、多くの観光客が写真撮影に訪れます。四季折々の景色を楽しめるのも、何度訪れても飽きない理由ですよね。
2. 温泉寺や湯泉神社など歴史的な名所
有馬温泉には、長い歴史を物語る神社仏閣がいくつもあります。
温泉寺は奈良時代に行基によって建立されたと伝えられ、有馬温泉の歴史の原点ともいえる場所です。境内には薬師如来が祀られていて、温泉の守り神として信仰されています。静かな雰囲気の中でお参りすると、心が落ち着く感じがします。
湯泉神社は有馬温泉の守護神を祀る神社で、温泉の発見に関わった大己貴命と少彦名命が御祭神です。秋には「有馬大茶会」という伝統行事が開催され、多くの人で賑わいます。歴史を感じながら参拝できるのは、古い温泉地ならではの魅力ですよね。
3. 有馬籠や炭酸煎餅といった伝統工芸品とお土産
有馬温泉のお土産といえば、やはり炭酸煎餅が定番です。
有馬温泉で湧き出る炭酸水を使って作られる炭酸煎餅は、パリッとした食感と素朴な甘さが特徴です。「三ツ森」や「吉高屋」といった老舗が軒を連ね、焼きたてを買えるお店もあります。焼きたてはまた格別の美味しさで、食べ歩きにもぴったりですよね。
また、有馬籠という竹細工の伝統工芸品も有名です。江戸時代から続く技法で作られる籠は、軽くて丈夫なのが特徴で、今も職人が一つ一つ手作りしています。実用性とデザイン性を兼ね備えた工芸品は、特別なお土産として喜ばれます。
温泉街には山椒を使った佃煮や、地元の素材を使ったスイーツを扱うお店もたくさんあります。お土産選びだけでも十分楽しめるのが、有馬温泉の良いところです。
まとめ
有馬温泉が日本を代表する温泉地として知られているのは、1300年以上という長い歴史と、金泉・銀泉という独特の泉質、そして豊臣秀吉をはじめとする歴史上の人物との深い関わりがあったからです。
ただし有馬温泉の魅力は過去だけにあるわけではありません。関西の主要都市から1時間以内というアクセスの良さや、風情ある温泉街の雰囲気、充実した観光スポットなど、現代の私たちが求める要素もしっかり備えています。日帰りでふらっと訪れるもよし、一泊してじっくり温泉と街歩きを楽しむもよし。訪れるたびに新しい発見があるのが有馬温泉なんですよね。
神戸や大阪を訪れる機会があれば、少し足を延ばして有馬温泉を体験してみてください。きっと「また来たい」と思える場所になるはずです。